現場での注目テーマ
この記事では、飲食店の厨房という過酷な環境での利用や、多店舗展開における課題を解決する業務用タッチパネルの選定ポイントを、5つのテーマで詳しく解説します。
従来の紙伝票によるオーダー管理では、「伝票の紛失」「文字の見間違い」「オーダーの重複」といったヒューマンエラーが起こりがちでした。キッチンモニターを導入することで、これらの課題は劇的に改善されます。
こうしたメリットを最大限に引き出すためには、タッチパネル自体が「止まらない」「壊れない」「使いやすい」という、業務用の基本性能を高いレベルで満たしていることが大前提となります。
飲食店の厨房は、IT機器にとって最も過酷な環境の一つです。油煙、蒸気、水しぶきなどが端末内部に侵入すると、基板の腐食やショートを引き起こし、致命的な故障の原因となります。
そこで選ぶべきは、IP65などの保護等級に準拠した防塵・防滴性能を備えたタッチパネルです。IP65は「粉塵の侵入がなく、いかなる方向からの水の直接噴流によっても有害な影響を受けない」ことを示す等級です。これにより、機器の内部が密閉され、油や水の侵入を完全に防ぎます。また、表面が汚れた場合でも、洗剤などを使って清掃できるため、HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の観点からも非常に重要です。
さらに、冷却ファンを持たないファンレス設計であることも見逃せないポイントです。ファンがあると、空気と一緒に油煙を吸い込み、内部に油汚れが固着してしまいます。ファンレスであればその心配がなく、長期にわたって安定した性能を維持できます。
調理中、スタッフの手は水で濡れていたり、衛生管理のためにゴム手袋を着用していたりすることがほとんどです。このような状態で、一般的なスマートフォンのような静電容量方式のタッチパネルを操作しようとすると、うまく反応せずに大きなストレスとなります。オーダーを消し込むといった単純な操作に手間取れば、厨房全体の作業リズムが乱れてしまいます。
厨房で使う端末には、物理的な圧力で反応する「抵抗膜方式」のタッチパネルが最適です。この方式なら、濡れた手はもちろん、ゴム手袋や、さらには調理器具の柄のようなものでも正確に操作が可能です。確実な打感が得られるため、操作ミスも起こりにくくなります。オーダーの確認や調理完了のチェックといった操作を、作業の流れを止めることなく、確実かつスムーズに行うことができます。
飲食店の厨房は、調理器具や食材、食器棚などがひしめき合い、スペースに余裕がないことがほとんどです。新たに端末を設置するとなると、その置き場所に頭を悩ませるケースも少なくありません。作業動線を妨げたり、熱源の近くにしか置けなかったりといった問題も生じがちです。
そのため、コンパクトな筐体設計で、設置の自由度が高い製品を選ぶことが重要です。特に、国際的な取り付け規格であるVESAマウントに対応しているモデルであれば、その自由度は格段に向上します。壁掛け金具を使って壁面に取り付けたり、調理台の上にアームで設置して、使わないときは奥に移動させたりと、厨房の限られたスペースを最大限に有効活用できます。デッドスペースを有効活用し、スタッフが安全かつ効率的に作業できるレイアウトを実現できます。
多店舗展開する飲食店チェーンにとって、各店舗で導入するIT機器の管理は重要な経営課題です。導入する端末のモデルが店舗ごとや導入時期ごとにバラバラだと、以下のような問題が発生します。
この課題を解決するのが、長期安定供給が保証された製品です。発売から数年間にわたって同一モデルを供給する製品を選ぶことで、新規出店時や機器の入れ替え時に、全店舗で同じハードウェアを継続して導入できます。機器の仕様を統一することで、システム設定やメンテナンス手順を標準化でき、導入から廃棄までにかかる総所有コスト(TCO)の大幅な削減につながります。
飲食店の厨房という特殊な環境でタッチパネルを導入するには、現場の要求に応える実用的なスペックを見極めることが不可欠です。油や水に強い環境耐性、濡れた手でも確実な操作性、限られたスペースへの設置性、そして多店舗展開を見据えた運用性を満たす業務用タッチパネルは、店舗全体の収益力強化に貢献する強力な投資となるでしょう。