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タッチパネル端末
活用と選定

飲食店向けタッチパネル選定ガイド:厨房の過酷な環境と多店舗展開の課題を解決

この記事がオススメな方

  1. 厨房のオペレーションを効率化したい方
    紙伝票によるオーダー管理に限界を感じ、キッチンモニター(飲食店の厨房内に設置される電子表示システム)の導入で業務を効率化したい店舗オーナーや店長におすすめです。
  2. 過酷な厨房環境に耐える端末をお探しの方
    油煙、蒸気、水しぶきが飛び交う厨房でも、故障の心配なく長期的に使える、高耐久なタッチパネルの選び方を解説します。
  3. 多店舗展開の管理コストを削減したい方
    チェーン展開において、各店舗のIT機器導入・保守にかかる手間とコストを削減し、TCO(総所有コスト)を最適化したい担当者は必見です。
  4. 厨房スタッフの使いやすさを重視する方
    濡れた手や手袋のままでもスタッフがストレスなく確実な操作ができる、現場の使い勝手にこだわった端末の要件をご紹介します。
  5. 衛生管理を徹底したい担当者
    HACCP等の衛生基準に対応するため、機器の清掃しやすさや、埃や油煙を内部に溜め込まない構造を重視する方にも役立つ情報です。

この記事では、飲食店の厨房という過酷な環境での利用や、多店舗展開における課題を解決する業務用タッチパネルの選定ポイントを、5つのテーマで詳しく解説します。

飲食店の業務効率化と、業務用組み込みタッチパネルに求められる基本性能
キッチンモニターを導入することで、紙伝票で発生しがちなオーダーミスをなくし、調理状況を可視化。ファーストフード店やレストランで、提供時間の短縮と顧客満足度の向上に繋がった事例を紹介します。
厨房の油煙や水しぶきに耐える防塵・防滴性能
蒸気が多い厨房や、洗い場の水しぶきにも耐えるIP等級の重要性を解説。清掃が容易で衛生的な状態を保てるメリットも説明します。
濡れた手や手袋でもスムーズな操作が可能な抵抗膜方式タッチパネル
調理中に濡れた手や衛生手袋を着用したままでも、確実な操作ができる抵抗膜方式の利点を解説。スタッフの作業を止めない、スムーズなオペレーションを実現します。
限られた厨房スペースを有効活用する、コンパクトな設置方法
スペースが限られる小規模な厨房でも、壁掛けやアームでの設置を可能にするVESA規格対応のメリットを紹介。デッドスペースを有効活用し、作業動線を確保します。
チェーン全体のTCO(総所有コスト)を削減する、ハードウェア統一と長期サポート体制
多店舗展開するチェーン店が、全店で同じ端末を導入することの重要性を解説。マスタ管理の簡素化やメンテナンスコストの削減に繋がる「長期安定供給」のメリットを説明します。

1. 飲食店の業務効率化と、業務用タッチパネルに求められる基本性能

従来の紙伝票によるオーダー管理では、「伝票の紛失」「文字の見間違い」「オーダーの重複」といったヒューマンエラーが起こりがちでした。キッチンモニターを導入することで、これらの課題は劇的に改善されます。

  • オーダーの可視化: ホールで受けた注文が、瞬時に厨房のディスプレイに表示されます。調理時間も計測・表示されるため、提供遅延の防止に繋がります。
  • 調理工程の管理: 先入れ先出しの原則に基づき、オーダーが調理順に整理されて表示されます。調理が完了したメニューはタッチ操作で消し込むことができ、調理担当者間の情報共有もスムーズです。
  • データ活用: オーダーから提供までの時間や、メニューごとの調理時間といったデータが蓄積され、人員配置の最適化やメニュー改善の分析に活用できます。

こうしたメリットを最大限に引き出すためには、タッチパネル自体が「止まらない」「壊れない」「使いやすい」という、業務用の基本性能を高いレベルで満たしていることが大前提となります。

2. 厨房の油煙や水しぶきに耐える防塵・防滴性能

飲食店の厨房は、IT機器にとって最も過酷な環境の一つです。油煙、蒸気、水しぶきなどが端末内部に侵入すると、基板の腐食やショートを引き起こし、致命的な故障の原因となります。
そこで選ぶべきは、IP65などの保護等級に準拠した防塵・防滴性能を備えたタッチパネルです。IP65は「粉塵の侵入がなく、いかなる方向からの水の直接噴流によっても有害な影響を受けない」ことを示す等級です。これにより、機器の内部が密閉され、油や水の侵入を完全に防ぎます。また、表面が汚れた場合でも、洗剤などを使って清掃できるため、HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の観点からも非常に重要です。
さらに、冷却ファンを持たないファンレス設計であることも見逃せないポイントです。ファンがあると、空気と一緒に油煙を吸い込み、内部に油汚れが固着してしまいます。ファンレスであればその心配がなく、長期にわたって安定した性能を維持できます。

3. 濡れた手や手袋でもスムーズな操作が可能な抵抗膜方式タッチパネル

調理中、スタッフの手は水で濡れていたり、衛生管理のためにゴム手袋を着用していたりすることがほとんどです。このような状態で、一般的なスマートフォンのような静電容量方式のタッチパネルを操作しようとすると、うまく反応せずに大きなストレスとなります。オーダーを消し込むといった単純な操作に手間取れば、厨房全体の作業リズムが乱れてしまいます。
厨房で使う端末には、物理的な圧力で反応する「抵抗膜方式」のタッチパネルが最適です。この方式なら、濡れた手はもちろん、ゴム手袋や、さらには調理器具の柄のようなものでも正確に操作が可能です。確実な打感が得られるため、操作ミスも起こりにくくなります。オーダーの確認や調理完了のチェックといった操作を、作業の流れを止めることなく、確実かつスムーズに行うことができます。

4. 限られた厨房スペースを有効活用する、コンパクトな設置方法

飲食店の厨房は、調理器具や食材、食器棚などがひしめき合い、スペースに余裕がないことがほとんどです。新たに端末を設置するとなると、その置き場所に頭を悩ませるケースも少なくありません。作業動線を妨げたり、熱源の近くにしか置けなかったりといった問題も生じがちです。
そのため、コンパクトな筐体設計で、設置の自由度が高い製品を選ぶことが重要です。特に、国際的な取り付け規格であるVESAマウントに対応しているモデルであれば、その自由度は格段に向上します。壁掛け金具を使って壁面に取り付けたり、調理台の上にアームで設置して、使わないときは奥に移動させたりと、厨房の限られたスペースを最大限に有効活用できます。デッドスペースを有効活用し、スタッフが安全かつ効率的に作業できるレイアウトを実現できます。

5. チェーン全体のTCO(総所有コスト)を削減する、ハードウェア統一と長期サポート体制

多店舗展開する飲食店チェーンにとって、各店舗で導入するIT機器の管理は重要な経営課題です。導入する端末のモデルが店舗ごとや導入時期ごとにバラバラだと、以下のような問題が発生します。

  • マスタ管理の煩雑化: 機器ごとに設定やOSイメージが異なり、管理工数が増大する。
  • 保守・メンテナンスの非効率化: 故障時の交換用予備機を機種ごとに用意する必要があり、コストがかさむ。
  • ソフトウェア更新時のリスク: 新しいアプリケーションを導入する際、全機種での動作検証が必要になる。

この課題を解決するのが、長期安定供給が保証された製品です。発売から数年間にわたって同一モデルを供給する製品を選ぶことで、新規出店時や機器の入れ替え時に、全店舗で同じハードウェアを継続して導入できます。機器の仕様を統一することで、システム設定やメンテナンス手順を標準化でき、導入から廃棄までにかかる総所有コスト(TCO)の大幅な削減につながります。

まとめ

飲食店の厨房という特殊な環境でタッチパネルを導入するには、現場の要求に応える実用的なスペックを見極めることが不可欠です。油や水に強い環境耐性、濡れた手でも確実な操作性、限られたスペースへの設置性、そして多店舗展開を見据えた運用性を満たす業務用タッチパネルは、店舗全体の収益力強化に貢献する強力な投資となるでしょう。