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Hitachi

現場での注目テーマ

タッチパネル端末
活用と選定

業務用組み込みタッチパネルで現場の生産性を最大化するための機能要件

この記事がオススメな方

  1. 工場や倉庫での生産性向上を目指す担当者
    生産ラインや物流倉庫のDX推進にあたり、現場に最適なタッチパネル端末の導入をご検討中の方に、選定の要点をご案内します。
  2. 過酷な現場環境で使える端末をお探しの方
    粉塵や油、水滴などが舞う環境でも長期的に安定稼働する、高耐久・高信頼な端末の具体的な要件を解説します。
  3. 既存設備のダウンタイムにお悩みの方
    端末の頻繁な故障による生産停止や、想定外のメンテナンスコストにお悩みの方へ、解決策となる機能をご紹介します。
  4. 限られたスペースへのタッチパネル設置をご検討中の方
    ピッキングカートや製造装置の制御盤など、設置場所に制約がある場合に、柔軟な設置を可能にする仕様について解説します。
  5. システムのTCO(総所有コスト)を削減したい方
    導入後の保守・運用まで見据え、システムのライフサイクル全体でコストを最適化したい方に向けた、長期的な選定基準を提示します。

この記事では、工場の生産ラインや物流倉庫で業務用組み込みタッチパネルを選定する際の重要な機能要件について、6つのテーマで詳しく解説します。

実際の業界のシーンと、業務用タッチパネルに求められるもの
製造ラインの生産管理や物流倉庫のピッキング指示など、IT端末が不可欠なシーンにおいて、なぜオフィス向けではなく「業務用」のタッチパネルが求められるのか、その根本的な理由を解説します。
長期安定稼働を実現する防塵・防滴、ファンレス設計
食品工場での洗浄作業や、金属加工現場での切削粉など、故障の原因となる水や粉塵から内部を保護するIP等級や、埃を吸い込まないファンレス設計の重要性を説明します。
工場・倉庫で作業効率を落とさない手袋対応の抵抗膜方式タッチパネル
クリーンルームや冷凍倉庫で厚手の手袋を着用したままでも、確実な操作を可能にする抵抗膜方式タッチパネル。その仕組みとメリットを解説します。
ピッキングカートや作業台への設置を可能にする、省スペース性とVESA規格
限られたスペースのピッキングカートや既存の制御盤へ後付けする際に、柔軟な設置を可能にするコンパクトな設計と、国際的な取り付け規格であるVESAの活用法を紹介します。
UPS機能内蔵で、電源ノイズの多い環境や瞬間的な停電時でもデータを保護
大型モーターが稼働する工場で発生しがちな、一瞬の停電(瞬断)や電源の不安定さからシステムを保護し、安全にシャットダウンさせる内蔵UPS機能の役割を解説します。
長期安定供給・長期サポートの重要性
10年以上稼働する生産設備では、IT機器が数年で製造終了・サポート終了となることが多く、運用上の課題となります。こうした課題に対し、同じモデルを長期間にわたって購入できる「長期安定供給」が、どのようにコスト削減につながるのかを解説します。

1. 実際の業界のシーンと、業務用タッチパネルに求められるもの

業務用組み込みタッチパネルは、具体的にどのようなシーンで、どのような役割を担っているのでしょうか。

  • 製造ラインの操作・表示端末として: 操作画面として製造装置の操作盤に組み込まれ、稼働状況の監視、生産レシピの選択、異常発生時のアラート表示など、装置と作業者をつなぐ役割を果たします。
  • 生産管理端末として: 各工程の作業台に設置され、作業指示の表示、生産実績の入力、品質検査結果の記録などに使用されます。ペーパーレス化を推進し、リアルタイムな進捗管理を実現します。
  • 物流倉庫のピッキングカート端末として: ピッキングカートに搭載され、出荷指示を表示したり、バーコードリーダーと連携して検品作業を行ったりします。移動しながらの使用となるため、振動への耐性や省スペース性が重要です。

これらのシーンに共通して求められるのは、いかなる状況でも業務を止めない「高い信頼性」と、誰でも簡単に使える「優れた操作性」、そして現場の環境に耐えうる「堅牢性」です。

2. 長期安定稼働を実現する防塵・防滴、ファンレス設計

製造現場や倉庫では、金属の切削粉や食品の粉末、洗浄時の水滴など、IT機器にとって有害な物質が常に存在します。これらから機器を保護するうえで、欠かせないのが防塵・防滴性能です。
選定の指標となるのが、国際的な保護等級であるIPコードです。例えば「IP65」と記載されている製品は、「6」が防塵性能(粉塵の侵入を完全に防ぐ)を、「5」が防水性能(あらゆる方向からの水の直接噴流に耐える)を示します。これにより、粉塵が舞う環境や、水洗いが必要な食品工場のラインでも安心して使用できます。
さらに、長期安定稼働の鍵を握るのが「ファンレス設計」です。一般的な端末は、内部の熱をファンで排出しますが、このファンが外部の粉塵や油煙を一緒に吸い込んでしまい故障の原因となります。ファンレス設計の端末は、筐体全体で効率よく熱を逃がすことでファンなしでの安定稼働を実現します。これにより、故障リスクの低減とメンテナンスの手間削減を両立できるのです。

3. 工場・倉庫で作業効率を落とさない手袋対応の抵抗膜方式タッチパネル

現場の作業者は、安全や衛生、作業内容に応じて様々な手袋を着用しています。スマートフォンなどで一般的な「静電容量方式」のタッチパネルは、指と画面の間の静電気の変化を検知するため、厚手の手袋や汚れた手袋では反応しにくいという弱点があります。
そこで業務用として推奨されるのが「抵抗膜方式」のタッチパネルです。これは、画面を押した際の圧力で位置を検知する仕組みです。手袋の種類を選ばず、ペンや爪先など、どんなものでも操作可能で、確実な入力が求められる業務用途に適しています。作業のたびに手袋を外すという非効率な動作をなくし、スムーズな操作性を維持するためには、抵抗膜方式の採用が合理的な選択と言えます。

4. ピッキングカートや作業台への設置を可能にする、省スペース性とVESA規格

業務用組み込みタッチパネルを導入する際、意外と課題になるのが設置スペースです。特に、ピッキングカートや既存の作業台、製造装置の制御盤など、限られたスペースに後から組み込むケースでは、コンパクトさが求められます。
奥行きの短い省スペースな筐体設計であることはもちろん、設置方法の自由度も重要なポイントです。ここで注目すべきは、国際的な取り付け規格である「VESA規格」への対応です。この規格に対応していれば、市販の多種多様なアームやスタンドを自由に利用でき、壁掛け、カートへの固定、卓上設置など、現場のレイアウトや作業者の動線に合わせた最適な設置が可能になります。

5. UPS機能内蔵で、電源ノイズの多い環境や瞬間的な停電時でもデータを保護

大型のモーターなどが稼働する工場では、電源が不安定になりがちです。瞬間的な電圧低下(瞬断)や電源ノイズは、端末の突然のシャットダウンやフリーズ、最悪の場合はOSやデータの破損を引き起こす原因となります。
この対策として、本体にUPS(無停電電源装置)の機能を内蔵したモデルが非常に有効です。万が一の瞬断が発生しても、内蔵バッテリーからの電力供給に切り替わり、システムを安全に終了させる時間を確保します。これにより、ファイルシステムの破損や入力途中のデータの消失を防ぎ、システムの信頼性を飛躍的に高めます。

6. 長期安定供給・長期サポートの重要性

工場の生産設備は、一度導入すると10年以上にわたって使用されるのが一般的です。しかし、IT機器のモデルサイクルは非常に短く、数年後には同じ製品が手に入らなくなり、故障時の交換やシステム増設の際に大きな問題となります。
そのため、製品選定の段階で「長期安定供給」が保証されているかを確認することが不可欠です。例えば「発売後5年間の供給保証」といったモデルであれば、システムのライフサイクル全体で見た総所有コスト(TCO:導入費+運用費)の削減に大きく貢献します。

まとめ

業務用組み込みタッチパネルを選定する際は、単なるPCスペックだけでなく、現場の環境や使い方に合わせた機能要件が重要です。防塵・防滴性能や手袋での操作性、電源の安定性、そして長期供給といったポイントを押さえることで、現場の生産性を最大化し、長期にわたり安定稼働する信頼性の高いシステムを構築できます。