現場での注目テーマ
この記事では、製造現場のDXを加速させる業務用タブレットの戦略的な活用法と、その選定で失敗しないためのチェックポイントを5つのテーマで詳しく解説します。
製造現場におけるタブレットの活用は、単なる紙の置き換えにとどまりません。生産性向上、品質改善、そして作業者の負担軽減に直結する多様な役割を果たします。
これらの活用を実現するためには、タブレットに「堅牢性」「操作性」「接続性」「セキュリティ」、そして「運用性」といった、製造現場ならではの要件が求められます。
工場内で作業者は常に移動し、時には工具や部品と一緒にタブレットを持ち運ぶ必要があります。そのため、タブレットには携帯性と堅牢性の両立が求められます。
業務用として設計された堅牢タブレットは、日々のハードな使用や不意の衝撃から内部の精密な電子部品を守る、頑丈な筐体設計がなされています。耐衝撃性や耐振動性、耐環境性の客観的な指標として、米国国防総省が定める「MIL規格(ミルきかく)」への準拠や、具体的な高さからの「落下試験」をクリアしているかどうかが挙げられます。
製造現場は、粉塵が舞い、水や油が飛散する可能性があります。また、作業中に誤ってタブレットを落下させてしまうリスクも常に付きまといます。
選定時には、国際的な保護等級である「IPコード」を確認することが必須です。例えば「IP65」という表記は、「6」が防塵性能(粉塵の侵入を完全に防ぐ)を、「5」が防水性能(いかなる方向からの水の直接噴流によっても有害な影響を受けない)を示します。これにより、粉塵が多い場所や水がかかる可能性がある場所でも安心して使用できます。
さらに、具体的な高さ(例:1.5m)からの落下試験をクリアするような耐衝撃性能があれば、作業台や腰の高さから誤って落下させてしまった場合でも、端末の破損や業務データの損失といった最悪の事態を防ぎ、業務の継続性を確保します。
製造現場では、安全のために作業用手袋の着用が義務付けられていることが多くあります。一般的なタブレットでは手袋越しのタッチ操作が難しく、その都度手袋を外す手間は作業効率を大きく低下させます。
業務用タブレットは、この課題を解決するための機能を備えています。動作モードにより、手袋をしたままや、水滴がついたままでもタッチパネルで操作できる機能を搭載したモデルがあります。
さらに、画面操作だけでなく、物理的な「ファンクションキー」の存在も重要です。ファンクションキーには、キーボードの特定のキーや業務用アプリの立ち上げを割り当てることができます。これにより、手元が汚れていたり、画面を正確にタッチしにくい状況でも、ボタン一つで確実かつ迅速な操作が可能となり、作業者のストレスを大幅に軽減します。
これらに加え、NFCリーダー内蔵の製品では、社員ICカードによるログイン認証や、NFCタグを使った物品管理など、よりセキュアで効率的なシステムを構築できます。
また、利用者自身でバッテリー交換が可能なモデルであれば、長時間のシフトでも予備バッテリーと交換して業務を継続でき、ダウンタイムを最小限に抑えられます。
業務用のシステムとしてタブレットを導入する場合、そのライフサイクルも重要な選定ポイントです。民生用タブレットはモデルチェンジが早く、数年で後継機が手に入らなくなることがほとんどです。
例えば、導入から3年後にシステムを拡張するため10台のタブレットを追加導入しようとした際、民生品では同じモデルが手に入らず、新しいモデルで既存の業務用アプリが正常に動作するか、一から検証し直す必要があります。場合によっては、アプリの改修が必要になり、想定外のコストと時間が発生します。
同一モデルを長期間にわたって安定的に供給する製品を選ぶことで、こうしたリスクを回避できます。一度導入したシステム構成を長期間維持することができ、導入から廃棄までにかかる総所有コスト(TCO)を大幅に削減できます。
製造現場のDXを成功に導くには、民生用タブレットにはない「堅牢性」や「操作性」、そして「運用性」が求められます。現場の過酷な環境に耐え、作業を止めない使いやすさを備え、長期的な視点でのコスト削減まで考慮された業務用タブレットこそが、DXを真に加速させる戦略的なツールとなり得ます。