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工場のIoT導入事例5選|生産性・品質向上を実現するスモールスタート実践ガイド
この記事がオススメな方
主な対象:製造業の設備管理
- 工場管理にIoTを導入したいが事例を知りたい
- そもそもIoTって何ができるのかがわからない
- 事例を知り、自社での導入を検討したい
こんにちは。現場の最適化を実現するソリューション「WORKFRONTシリーズ」で、品質向上・生産性向上・省エネ推進をご支援する日立ケーイーシステムズのライターチームです。
工場の生産性向上や人手不足などの課題に対し、解決の鍵として「IoT」が注目されています。しかし、言葉は知っていても、具体的に何ができて、どう始めればよいのか、イメージが湧かない人も多いのではないでしょうか。
本記事では、工場のIoT化がもたらすメリットから、実際に成果を上げている企業の成功事例5選、導入における課題と成功へのステップまでを解説します。本記事を読めば、自社の課題解決に向けたIoT活用の第一歩がきっと見つかります。
WORKFRONT/eqIoTとは
IoTとは「Internet of Things」の略で、日本語では「モノのインターネット」と訳されます。従来、インターネットに接続されるのはパソコンやサーバーといったIT機器が中心でした。IoTは、それ以外の「モノ」をインターネットに接続し、相互に情報をやり取りする仕組みです。
工場においては、人の経験や勘、手作業での記録に頼っていた情報がセンサーを通じてデータとして正確に収集・活用できるようになります。
工場にIoTを導入するメリット
IoTを工場に導入すると、どのようなメリットが生まれるのでしょうか。ここでは、以下の5つの視点で解説します。
生産状況の見える化
各生産ラインの生産数や進捗率、タクトタイムといった情報をリアルタイムでデータ収集し、モニターなどに表示できます。
管理者は事務所にいながら現場の状況を把握できるため、生産計画と実績の乖離を即座に発見・対策可能です。問題発生時の対応が早まるだけでなく、生産計画全体の精度向上にもつながります。
予知保全の実現
機械や設備に振動センサーや温度センサーを取り付け、稼働データを常時監視します。収集データを分析すれば、通常と異なるパターンを検知でき、故障前にメンテナンスできます。
突然のライン停止といった計画外のダウンタイムを未然に防ぎ、設備の安定稼働と生産性の最大化を実現します。
品質の見える化
製造工程における温度、湿度、圧力といった環境データや、カメラによる画像検査データなどを自動で収集・記録します。万が一、不良品が発生しても、遡ってデータを分析できるため、容易に原因の特定が可能です。
どのような条件下で不良が発生しやすいかを把握し、製造条件を最適化すれば、製品品質の安定と向上に役立ちます。
稼働状況の見える化
生産設備の稼働・停止時間を正確に把握でき、要因分析が可能です。特に、短時間の停止が繰り返される「チョコ停」は、積もり積もって大きな生産ロスにつながりますが、原因の特定が難しいのが課題でした。
IoTで稼働データを詳細に分析し、チョコ停の根本原因を判明させることで、改善策の立案・実施につながります。
人手不足の解消
作業者が毎日手書きで記録していた生産日報や点検記録などを、IoTを導入することで自動的に収集・デジタル化可能です。現場の記録・報告業務の負担が軽減され、作業者は本来の生産活動に集中できるようになります。
また、設備の遠隔監視や異常時の自動通知といった仕組みを構築すれば、より少ない人数で効率的な運営が可能となり、人手不足問題の解消につながります。
工場のIoT導入成功事例5つ
ここでは、実際にIoTを導入している工場の成功事例を5つ紹介します。工場にIoTを導入する際の参考にしてください。
機器の稼働状況の見える化
ある組立製造業では、手作業による稼働実績の収集や手書き報告に時間がかかり、ミスが多いことが課題でした。そこでIoTの稼働監視パッケージを導入し、プレス機の稼働情報を自動収集・見える化に取り組みました。
BIツールとの連携で報告工数を大幅に削減し、リアルタイムでの正確なデータ活用を実現しました。
製造工程の見える化
ある食品製造業では、焼きムラなどの製品ロスが発生していましたが、その原因が特定できていないことが課題でした。そこでIoTを導入し、生地の粘度や焼成炉の温度、ベルト速度といった製造工程のデータをリアルタイムで収集・見える化を実現しました。
手書きでは把握しきれなかった工程の状態が明らかになり、ロス削減に向けたデータ分析の基盤構築につながっています。
実績入力業務の効率化
ある金属加工部品製造業では、手書きの日報作成と集計に工数がかかり、生産性向上の妨げとなっていました。そこで実績収集システムを導入し、作業指示のデジタル化を実現しました。
現場での実績入力をシステム上で行うことで、手書き日報と転記作業を廃止しました。間接業務の工数を大幅に削減し、生産性の向上を実現しています。
実績管理帳票を自動作成
ある化学製造業では、操業データから手作業で日次帳票を作成する業務が現場の大きな負担でした。
操業情報をリアルタイムで自動収集するシステムを導入し、蓄積データから各種管理帳票を自動作成する仕組みを構築しました。結果として帳票の作成・管理工数が削減され、大幅な業務効率化を実現しています。
デジタル化進行度の見える化
ある組立製造業では、DX推進にあたり、どこから着手すべきかわからず推進できていませんでした。そこで業務のデジタル化レベルを診断するサービスを導入しました。
調達・生産・出荷といった業務のデジタル化進行度がチャートで客観的に見える化され、データに基づいた改善の優先順位付けやロードマップの策定が可能になっています。
工場にIoTを導入する際の課題
多くのメリットがあるIoTですが、導入を進める上ではいくつかの課題も存在します。ここではおもな3つの課題について見ていきましょう。
コスト
センサーや通信機器、ゲートウェイ、サーバー、ソフトウェアなどの導入には、初期投資と運用費用がかかります。特に中小企業にとっては大きな負担となりかねません。
対策として、国や自治体が提供するIT導入補助金などを活用したり、安価なセンサーを数台導入するなど、小さく始めて効果を検証しながら、段階的に投資を拡大するのがおすすめです。
人材
IoTシステムを構築・運用したり、収集したデータを分析して改善につなげたりするためには、ITやデータサイエンスの専門知識を持つ人材が必要です。
対策としては、専門知識がなくても直感的に使えるクラウドサービスやツールを選定したり、IoT導入の企画から運用までをサポートしてくれる外部の専門パートナーとの連携が現実的な選択肢となります。
セキュリティ
工場の生産システムをインターネットに接続すると、外部からのサイバー攻撃やウイルス感染、機密情報の漏洩といったセキュリティリスクを伴います。生産ラインが停止させられるような事態になれば被害は甚大です。
セキュリティ専門家の知見を取り入れ、通信を暗号化するなど、適切なセキュリティ対策を講じましょう。
工場をIoT化するステップ
「何から始めればよいか分からない」という人のために、スモールスタートを基本とした工場IoT化の4つのステップを紹介します。
明確な目的を設定する
まず重要なのが、「IoTを導入して何を解決したいのか」という目的の明確化です。
たとえば、「Aラインのチョコ停を減らして稼働率を10%向上させたい」「B工程の不良品発生原因を特定したい」など、できるだけ具体的で測定可能な目標を設定しましょう。この目的が、その後のデータ選定やツール選びの判断基準となります。
取得するデータを特定する
設定した目的を達成するために、どの設備の、どのようなデータを取得する必要があるかを具体的に定義します。
たとえば、稼働率向上が目的なら「設備の稼働・停止時間」、品質改善が目的なら「加工時の温度や圧力」といった具合です。いきなり多くのデータを取ろうとせず、目的達成に必要最低限のデータに絞って始めましょう。
データを可視化・分析する
センサーで収集したデータを、グラフや表などを使って「見える化」します。この「見える化」の段階を最初のゴールとしましょう。データがグラフになるだけでも、これまで経験や勘では気づかなかった問題点や改善のヒントが見えてきます。小さな成功体験を積み、効果を実感できれば、次のステップに進むための原動力となるでしょう。
自律制御を行う
データの可視化・分析によって改善活動が進んだ先には、AIなどを活用した「自律制御」の段階があります。収集したデータをAIが分析し、最適な生産条件を自ら判断して、機械や設備を自動的にコントロールする高度な活用法です。
ただし、これはあくまで最終的な目標であり、まずは「見える化」で着実な成果を出しましょう。
まとめ
本記事では、工場のIoT化がもたらすメリットから具体的な成功事例、そして導入を成功させるためのステップについて解説しました。IoTは、生産性向上や人手不足といった課題を乗り越えるための強力な武器です。
解説した内容を参考に、まずは1つのライン、1つの課題から「見える化」に取り組み、小さな成功体験を積んでください。
なお、自社でのIoT化の取り組みが難しい場合は、株式会社日立ケーイーシステムズの設備保守サポートシステム「WORKFRONT/eq」をご検討ください。問題点の抽出や、課題・ニーズへの対応など一連のプロセスをサポートします。
WORKFRONT/eq