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IoT 工場 見える化

工場の見える化はIoTが鍵|成功事例と導入ステップを解説

この記事がオススメな方

主な対象:製造業の生産管理・生産技術・設備管理・品質保証

  1. 会社の生産ラインでの効率の悪化が顕著になり、上司から改善策を求められた
  2. 業界内でのデジタル化の潮流や競争の激化を感じ、IoT技術に目を向け始めた
  3. 工場の生産ラインの稼働状況をリアルタイムで把握したい

こんにちは。現場の最適化を実現するソリューション「WORKFRONTシリーズ」で、品質向上・生産性向上・省エネ推進をご支援する日立ケーイーシステムズのライターチームです。

製造現場の効率化や品質向上、コスト削減を実現するためには「工場の見える化」が欠かせません。その鍵を握るのがIoTの活用です。本記事では、IoTで工場の見える化を実現するメリットから、導入ステップ・不安要素・課題の解決方法・導入による成功事例までを解説します。「何から始めればよいかわからない」「IoTは難しそう」などの悩みがある人は、ぜひ参考にしてみてください。

WORKFRONT/IoT

IoTで実現する工場の見える化とは

工場のIoT化とは、製品を製造するための生産設備だけでなく、従業員が快適に活動するための設備や建物にIoTの機能を持たせる取り組みを指します。IoT技術を活用し、工場内の各種データをリアルタイムで収集・分析して可視化することが「工場の見える化」です。

過去には、目視で進捗や製造数などを確認していましたが、現代ではIT技術の進歩により、管理の効率化や微細な変化の検知が可能になりました。

工場の見える化は、工場運営におけるさまざまな改善効果が期待でき、製造業の競争力強化に直結する重要な要素です。

なお、IoT(Internet of Things)とは機械や設備などのあらゆるモノをネットワークに接続し、相互に情報交換を行う技術のことを指します。

IoT導入での見える化が工場にもたらすメリット

IoTの導入は、製造業が直面する人手不足への対策・国際競争力の強化・原価高騰への対応など、多様なメリットがあります。

リアルタイムで進捗を把握できる

IoT機器の導入によって、設備や生産ラインの稼働状況・全体の作業進捗などをリアルタイムで取得できるようになります。工場内の設備が正常に稼働しているか、あるいは異常な傾向が生じていないかを瞬時に把握することが可能です。

たとえば、作業進捗の遅れが発生した場合でも、原因をデータから即座に可視化し、早急に対策を検討できます。

設備の停止リスクを削減できる

IoTセンサーやカメラを活用して設備の稼働状態を常時モニタリングすることで、振動や温度上昇などの不具合をいち早く察知し、事故を未然に防げます。

つまり、故障が発生してから対処する「事後保全」ではなく、トラブル発生前に計画的なメンテナンスを実施する「予知保全」へと移行可能です。結果として、故障・修理コストやメンテナンス費の削減にもつながります。

生産性の効率化ができる

IoTを導入することで、業務改善を行うための現状把握にかかっていた多大な作業工数を削減できます。収集した稼働データを分析することで、生産工程におけるボトルネックや非効率な部分(ムリ・ムダ・ムラ)を特定し、迅速に改善策を講じることが可能です。

さらに、製品在庫や材料の管理をIoTを紐づけると、過剰在庫や欠品のリスクも低減し、生産コストの削減や納期の短縮も期待できるでしょう。

人件費などのコスト削減ができる

従来、人が行っていた計測作業や手書きの書類、パソコンへの入力といったデータ収集・管理にかかる作業工数を大幅に削減できます。また、設備稼働の最適化による無駄なエネルギー消費の削減も可能です。

さらに、各設備の稼働データを細かく把握し、不要なときに機械を自動的にオフにする機能などを活用することで、光熱費などの大幅なコスト削減が期待できるでしょう。

高品質の製造を維持できる

生産状況をリアルタイムでデータ分析すれば、不良品発生の未然防止や正規ラインへ不良品が混入するリスクの削減が可能です。さらに、IoT技術を活用した製造工程の自動化は、品質のばらつきを最小限に抑えつつ、人為的なミスやエラーを解消できます。

万が一不良品が発生した場合でも、生産設備の状態を細かなデータとして記録・蓄積しているため、品質保証の向上やサプライチェーン全体の改善に役立てることも可能です。

IoT導入から見える化までの流れ

IoT導入の取り組みは、一般的に複数の段階を経て進められます。基本的な流れを見ていきましょう。

目的を定める

最新技術の導入そのものを目的にしてしまうと、本来必要な情報が適切に見える化されません。
たとえば、「設備の稼働率を向上させたい」「予知保全を取り入れたい」「在庫管理を効率化したい」といった具体的な課題を明確にすることが重要です。

目的を定めることで、限られた資金・時間・人員といったリソースを最も重要な領域に集中させ、最大の効果を発揮できる体制を構築できます。
また、いきなり全体最適を目指すのではなく、まずは個別課題にフォーカスし、無理のない規模でスモールスタートすることが、継続的な改善と見える化推進の鍵となります。

IoTに必要な環境を整える

目的と見える化の範囲が決まったら、必要な機材やIoTシステムの選定と整備を行います。データ収集のために、設備や作業員のデータを取得するセンサーや通信機器を選定しましょう。

古い設備をIoT化する場合は、レトロフィットIoTという、センサーなどのIoT対応機器を後付けする考え方が有効です。また、収集したデータを保存し、分析するためのサーバーやパソコン、データを解析するためのシステムやデバイスも必要となります。

また、工場内のネットワーク環境の整備も必要で、有線LANやWi-Fiなど、用途に応じて最適な通信方式を選択しなければなりません。システム関連の部署がない場合は、専門業者に相談し、適切な機器選定や導入サポートを受けるとよいでしょう。

セキュリティ対策を実施する

必要な機材と環境が整ったら、本格的な運用に入る前に、必ずセキュリティ対策を検討・整備しなければなりません。IoTはあらゆる機器・設備をインターネットなどのネットワークに接続するため、情報漏えい・不正アクセス・サイバー攻撃のリスクも高まります。

特に、従来の工場ネットワークは外部ネットワークとの接続を想定していない場合が多いため、IoT化によって新たなセキュリティの仕組みが必要です。対策を怠ると、ランサムウェアなどの攻撃により製造データ流出や制御システム乗っ取りなどの被害を受ける恐れがあります。

目的に合わせてデータ化する

セキュリティ対策を施し、運用段階に入ったら、設定した目的に沿ってデータの収集と整理をしましょう。収集すべきデータの内容は、どの現場で何を重視したいかによって異なりますが、おもに生産数・不良品の数・担当者の作業時間・設備の設定内容・環境条件などが対象です。

IoTデバイスに備えられたセンサーによって、稼働状況・温度・振動・電力消費量など多種多様な物理的なデータを収集し、ネットワークを介して集計します。収集されたデータは、数値やグラフといった視覚的な情報に変換され、リアルタイムで見える化されます。

集めたデータを分析して改善する

IoTシステム導入の価値は、収集・蓄積されたデータを活用して、具体的な改善施策を実施することにあります。集められたデータを分析し、不具合の原因や生産工程におけるボトルネック、最適条件などを導き出し、現場の改善に繋げていきましょう。

たとえば、エネルギーの増減データを時系列や設備ごとに分析し、ムダなエネルギー消費を特定できれば、大幅なコスト削減ができます。

改善策を実施した後も、PDCAサイクルを回すことで、工場の運営効率を持続的に向上させることが可能です。見える化は課題を効率的に発見・解決する手段であり、IoT導入で満足せず改善につなげることが重要です。

IoT導入時の不安要素

工場のIoT化は、生産性向上や効率化など多くのメリットをもたらします。しかし、導入にはいくつかの課題があります。まず、Wi-Fi環境の整備やIoT機器の導入には数千万円規模の初期投資が必要になる場合があり、さらに継続的なランニングコストも発生するため、費用対効果の見極めが重要です。

また、外部ネットワークとの接続により情報漏洩やサイバー攻撃といったセキュリティリスクが高まるため、万全な対策が欠かせません。加えて、既存のレガシー設備との接続には技術的な障壁があり、重要な生産データを外部に出すことへの心理的な抵抗も課題となります。

さらに、IoT化を推進するためにはIT知識を持つ人材の確保や運用体制の構築が必要ですが、現場では人材不足が深刻な問題となっています。これらの課題を一つひとつ解決しながら進めることが、IoT化を成功させる鍵です。

IoT導入時の課題解決ポイント

IoT導入を成功させるには、目的を明確にし、段階的に進めることが重要です。まずは一部の製造ラインでPoC(概念実証)を行い、初期投資を抑えながら効果を検証します。既存設備には、後付けセンサーを活用するレトロフィットIoTが有効で、現場負担を最小限にしながらデータ活用を進められます。

人材不足には、社内教育の強化や外部パートナーとの連携で対応します。また、収集したデータは単なる「見える化」にとどまらず、現場と経営層の意思決定を支援する「魅せる化」へと進化させることで、行動につながる価値ある情報を提供します。

IoTを活用した成功事例

株式会社日立システムズでは、組立製造業のF社に対し、「稼働監視パッケージ」を導入した事例があります。この稼働監視パッケージは、既存設備を変更せずにデータ収集が可能で、現場の作業負担を抑制しつつ設備の稼働状況を把握できるIoTサービスです。

導入前は、稼働実績の収集が人手で行われ、報告書も手書きだったため、時間とミスが多く発生していました。導入後はHMI(Human Machine Interface)を活用することで、稼働情報の収集の自動化と現場での見える化を実現し、運転状態のプレス回数を生産数として計測しました。

このパッケージは、導入後の運用管理も専用ツールを利用して顧客自身で対応できる仕様となっています。

まとめ

工場のIoT化による見える化は、設備の稼働状況や生産データをリアルタイムで可視化し、生産性向上・品質管理・コスト削減など多くのメリットをもたらします。導入の際は、「目的の明確化」「スモールスタート」など、戦略的かつ段階的な取り組みが成功の鍵です。

IoT導入の目的は「単なるデータ取得」ではなく、継続的改善の仕組みづくりにあります。ぜひ、自社に合ったIoT導入で製造現場の効率を高めていきましょう。

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