IoTソリューション活用ガイド｜導入メリットや課題・推進のポイントを詳しく解説

こんにちは。現場の最適化を実現するソリューション「WORKFRONTシリーズ」で、品質向上・生産性向上・省エネ推進をご支援する日立ケーイーシステムズのライターチームです。

近年、IoTは業種を問わず企業の成長戦略に欠かせない存在となりつつあります。センサーやネットワークを活用する仕組みは、効率化やコスト削減だけでなく、新しいサービスや事業の創出にも結びつきます。しかし、投資や人材面の課題から導入を迷う声も少なくありません。

この記事では、IoTソリューションを検討する担当者に向けて、導入のメリットや直面しやすい課題、さらに推進のポイントについて解説します。

WORKFRONT/IoT

IoTソリューションとはデータ活用で業務課題を解決する仕組みのこと

IoTソリューションとは、センサーやネットワーク技術を組み合わせて、企業が抱える多様な課題に対応する仕組みを指します。従来は家庭の家電やスマートホームの分野で注目されていましたが、近年は産業領域での利用が急速に広がっています。

現場の機器や設備をネットワークに接続することで、遠隔から状態の把握や制御が可能になりました。さらに取得したデータを活用することにより、属人的だった作業を標準化し、組織全体で共有できる仕組みへと変革することができます。

さらに、データが蓄積されることで、業務の可視化やトラブルの早期発見にもつながり、意思決定の精度を高める基盤として機能します。

IoTソリューション導入で得られるおもなメリット

IoTを導入することで、企業の活動にはさまざまな変化がうまれます。その影響は現場の運用だけでなく、経営や新たな取り組みにも広がります。ここでは、IoTソリューションの導入で得られるおもなメリットについて解説します。

設備保全や業務自動化による大幅なコスト削減

IoTによる設備の稼働状況の常時モニタリングにより、異常を早期に察知し、計画的な保守が可能になります。これにより、突発的な故障やライン停止を防ぎ、修理費や機会損失を大幅に削減できます。さらに、自動化を進めることで、人件費や管理コストを最小化し、全体のコスト構造を改善できる点が特長です。

製造現場やオフィス全体の業務効率を最適化

センサーやデバイスから収集したデータを活用することで、工程の無駄や作業の偏りを明確化できます。これにより、生産ラインの稼働率を向上させたり、オフィスのエネルギー利用を抑制したりと、現場全体の効率化が進みます。さらに、数値に基づく改善は一度きりではなく、継続的な業務改革の基盤となります。

リアルタイムデータで迅速かつ精度の高い意思決定が可能に

IoTは現場から膨大なデータを即時に収集し、状況を正確に示します。そのため管理者や経営層は従来よりも早く判断でき、予測に基づく戦略立案も行いやすくなります。市場変化やトラブルに素早く対応できることは、企業が競争力を保つ上で大きな強みとなるでしょう。

新規事業やサービス創出による競争力の強化

IoTで得たデータは、新しいビジネスモデルの基盤となります。製品をサービスとして提供するサブスクリプション型の仕組みや、顧客データに基づくカスタマイズサービスなど、従来にない価値を生み出せます。新規事業の展開は、企業の収益機会を広げ、長期的な競争力強化につながります。

IoTソリューションで解決できるおもな課題

IoTは効率化だけでなく、企業の日常的な課題解決にも役立ちます。ここでは、その詳細について解説します。

機器やシステムの稼働状況をまとめて管理・見える化する

工場や施設で複数の機器を管理する場合、巡回や手作業による確認には限界があります。IoTを導入すれば、各設備の状態をセンサーで監視し、稼働データをシステムに集約できます。これにより、一元的な状況把握が可能となり、故障の兆候も早期に察知できます。現場の負担軽減と安定稼働を両立できる点が魅力です。

業務プロセスや作業履歴をデータ化して活用できるようにする

製造やサービスの現場では、工程や作業履歴を正しく残さなければ、品質トラブル時の原因追及が難しくなります。IoTを用いれば「誰が・いつ・どの工程で・どの部品を使用したか」といった情報を自動で蓄積できます。

蓄積データは不具合発生時の迅速な対応だけでなく、再発防止策の立案にも活用でき、品質管理の基盤を強化します。

従業員の働き方や作業環境をモニタリングして改善につなげる

IoTは人の働き方や職場環境の把握にも役立ちます。勤怠や休憩状況をセンサーや打刻データで可視化することで、過重労働を防止できます。また、作業環境の温度や湿度、騒音を継続的に記録すれば、労働災害のリスク軽減や快適な職場づくりに直結します。従業員の健康と安全を守る観点からも導入価値は高いといえるでしょう。

業界別に見るIoTソリューションの活用事例5選

IoTは業種を問わず幅広く応用されており、現場の課題に合わせて活用方法が異なります。ここでは代表的な5つの業界における活用事例を紹介します。

製造業｜設計や生産情報を可視化して属人化を解消

製造業ではスマートファクトリー化が進み、IoTによって工場内の機器を一元管理できる環境が整いつつあります。設計や工程の情報をデータとして共有することで、経験や勘に依存した作業を減らすことが可能です。これにより属人化が解消され、生産性の向上や品質の安定化につながり、効率的な稼働体制を構築できます。

介護業界｜センサーで利用者の安全と環境を見守る仕組み

介護現場では人材不足が深刻であり、IoTの導入が大きな助けとなっています。たとえば、バイタルや室温を感知するセンサーを設置することで、利用者の体調や居室環境を常時把握できます。さらに、ナースコールと連動し、異常時に自動通知される仕組みを構築することで、介護スタッフの負担を軽減しながら安全性を高められる点が特長です。

農業・漁業｜自動操縦やデータ配信で作業効率と収益性を向上

農業では、GPS制御を備えた自動操縦トラクターが普及し、作業の精度と効率を高めています。漁業においては、水揚げ情報をリアルタイムで配信し、顧客が事前に取引条件を確認できる仕組みも導入されています。こうした取り組みにより、作業時間の短縮と販売機会の拡大が同時に実現し、収益向上にもつながっています。

物流業｜AI配車システムでルート最適化とコスト削減を実現

物流業界では慢性的な人手不足とコスト増に対応するため、AIを活用した配車システムが導入されています。膨大な配送ルートを瞬時にシミュレーションし、最適な計画を提示できる仕組みです。これにより燃料費や労働時間を抑えつつ、誰でも均一な品質で配車計画を立案できるようになり、現場全体の効率改善につながります。

小売・流通業｜モバイル決済で買い物体験をスムーズに

小売業界では、来店者の利便性を高める取り組みとして、スマートフォン決済の導入が進んでいます。たとえば、アプリで商品をスキャンし、そのまま決済できる仕組みを整えることで、レジ業務を効率化できます。顧客体験が向上するだけでなく、購買データを分析してマーケティングに活用できる点も大きなメリットです。

IoTソリューション導入におけるおもな課題

IoTは多くの効果をもたらしますが、実際に導入を進める段階ではさまざまな障壁が存在します。ここでは企業が直面しやすい代表的な課題について解説します。

高額な初期投資や運用コストの負担がかかる

IoTを本格的に導入する際には、センサーや通信機器の設置に加え、システム開発や運用の費用が発生します。数百万から数千万規模になるケースもあり、中小企業にとっては大きな負担です。また、運用後も保守や通信料など継続的な費用がかかるため、投資対効果を明確にできないと導入判断が難しくなります。

専門人材・ノウハウ不足によって推進が停滞する

IoT導入には現場知識とITスキルの両方を備えた人材が求められます。しかし、社内に適任者が不足しているケースは多く、外部に依存せざるを得ません。さらに、IoTはセキュリティやデータ分析など幅広い領域にまたがるため、単一の知識だけでは対応できません。人材・ノウハウ不足が導入を遅らせる大きな要因となっています。

目的が曖昧で試験導入だけで止まってしまう

IoTを導入しても、「何を改善するのか」が明確でなければ、PoC（概念実証）段階で止まってしまうことが少なくありません。導入自体が目的化し、収集したデータを活用できないままシステムが放置されるケースもあります。具体的な成果指標や運用方針を定めていないと、投資効果を実感できず、現場への定着も難しくなるでしょう。

企業のIoT化を推進するためのポイント

IoTを導入するだけでは成果につながりません。効果を引き出すには導入の進め方や運用の姿勢が重要です。ここでは、企業がIoT化を成功させるために押さえるべきポイントについて解説します。

目的を明確にして効果を意識しながら進める

IoT導入は手段であり、目的ではありません。改善したい業務や期待する成果を明確に定めなければ、投資効果を実感できずに終わる恐れがあります。導入の狙いを具体化し、その効果を常に意識しながら進めることが成功の前提条件となります。

小ロットにも対応できる低コストな体制を整える

IoTは開発や運用に費用がかかりやすく、特に小規模な取り組みでは採算が課題になります。そのため、モジュール化や効率的な開発体制を整え、小ロットでも導入可能な仕組みを構築することが重要です。コストを抑えつつ実証できれば、拡張へ進みやすくなります。

できる部分から段階的にIoTへ移行する

いきなり大規模にIoTを導入すると、費用や工期が膨らみ失敗リスクが高まります。まずは負担の少ない範囲から実装し、得られた成果を確認しながら範囲を広げることが有効です。小さな成功体験を積み重ねれば、現場の理解が進み、組織全体に浸透しやすくなります。

システム全体を見渡して最適化を図る

部分的な導入にとどまると、部門ごとの最適化に偏り、全体的な効果が見えにくくなります。IoTを推進する際は、アプリ、ハード、クラウドを含めたシステム全体を俯瞰する視点が欠かせません。全体の改善を意識することで、コストや工数を抑えつつ、当初の目標を達成しやすくなります。