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工作機械のIoT化で何が変わる?生産性向上とダウンタイム削減の具体策
この記事がオススメな方
主な対象:製造業の生産管理・生産技術・設備管理・品質保証
- 稼働率向上のため、工作機械の稼働状況や停止理由をリアルタイムで可視化する方法を探している
- 突発的な設備故障を防ぐため、電流や振動データを収集して予知保全を実現する仕組みを知りたい
- 通信機能のない古い工作機械にセンサーを後付けし、低コストでIoT化ができるか調べている
- 工作機械のIoT化による具体的な効果や成功事例を収集し、社内での導入提案の材料にしたい
こんにちは。現場の最適化を実現するソリューション「WORKFRONTシリーズ」で、品質向上・生産性向上・省エネ推進をご支援する日立ケーイーシステムズのライターチームです。
「工作機械の稼働率が上がらない」「突発的な故障でラインが止まってしまう」といった課題に頭を悩ませていませんか。多くの製造現場では、古い設備が現役で稼働しており、データの取得が難しいと思われがちです。
この記事では、工作機械のIoT化によって得られる具体的なメリットや、古い機械にも適用できる「後付けIoT」の手法、さらに実際の成功事例までを解説します。生産性向上とダウンタイム削減を実現するための手引きとして、ぜひお役立てください。
※本記事に記載のサービス・機能・サポート内容は一般的な情報であり、当社にて必ずしも対応を保証するものではございません。
目次
工作機械のIoT化とは?
工作機械のIoT化とは、マシニングセンタや旋盤、プレス機といった製造設備をネットワークに接続し、稼働状況や状態データを収集・活用する仕組みのことです。
従来、現場の担当者が手書きの日報で管理していた情報を、センサーや通信機器を用いて自動収集し、デジタルデータとして可視化します。工作機械のIoT化により、リアルタイムでの監視や、蓄積されたデータの分析が可能となり、生産効率の改善や品質向上につなげられます。
工作機械のIoTがもたらす2つのメリット
工作機械をIoT化することで得られる現場のメリットについて、特に重要な2つの点について解説します。
稼働状況の「可視化」によるボトルネック解消
IoT化の最大のメリットは、工場をリアルタイムで正確に把握できることです。各設備の稼働・停止時間、サイクルタイム、停止理由などを可視化し、生産ラインのボトルネックを明確にします。
「チョコ停」の原因分析や段取り替え時間の短縮といった改善策を、データに基づいて立案できるようになります。これにより、感覚や経験に頼った管理から脱却し、事実に基づいた生産性向上の実現が可能になります。
異常検知と「予知保全」によるダウンタイム削減
振動や温度、電流値などのデータを常時監視することで、故障の予兆を捉える「予知保全」が可能になります。従来の定期的なメンテナンス(予防保全)や、壊れてから直す(事後保全)アプローチとは異なり、部品の劣化状態に応じて最適なタイミングでメンテナンスが可能です。突発的な長時間のライン停止を防ぎ、メンテナンスコストの最適化も図れます。
工作機械IoTの成功事例と具体的効果
実際に工作機械のIoT化に取り組み、課題解決に成功した場合の効果を紹介します。実際の効果を知ることで、導入イメージを具体化しましょう。
機器の稼働状況の可視化
ある建築物を手掛ける企業では、設備の稼働状況が不明確で生産進捗の把握が困難でした。そこで、積層信号灯に後付けセンサーを設置し、稼働データを自動収集するシステムを導入しました。
事務所のモニターで稼働状況がリアルタイムに可視化され、生産のボトルネックが特定可能になり、現場の負担軽減と生産性向上を同時に実現しています。
製造工程の可視化
ある食品製造業では、製品ロスの発生要因が特定できず、有効な対策が打てないことが課題でした。そこでIoTの稼働監視パッケージを導入し、製造工程の重要パラメーターをリアルタイムで可視化しました。
焼きムラやコゲの発生条件と製造データとの相関関係が明らかになり、データに基づいた品質改善とロス削減に向けた分析が可能になりました。
実績入力業務の効率化
食品製造の現場では、温度管理などのデータを担当者が手書きで計測・記録しており、作業負担の大きさとデータの正確性が課題となっていました。IoTシステムの導入により、手書き計測業務を廃止し、現場負荷を大幅に軽減。記録ミスを防ぎ、信頼性の高いデータ収集を実現しました。
実績管理帳票を自動作成
石油・化学製造業の現場では、複数工場の操業データを手動で収集し、日次の管理帳票を作成・印刷する業務に工数を費やしていました。各工場のデータをリアルタイムで一元管理するシステムを導入し、帳票作成プロセスを自動化しました。その結果、9種類あった管理帳票の作成・管理工数がゼロになり、現場の負担が激減しました。
デジタル化進行度の可視化
DX推進を検討していた組立製造業では、自社の課題や優先順位が不明確で、どこから着手すべきか判断できない状態でした。
「工場業務デジタル化簡易診断サービス」を活用し、独自のチェックリストを用いて現状をチャートで可視化したことで、自社の立ち位置が明確になり、優先して取り組むべきテーマの選定や、具体的なロードマップの策定が可能になりました。
後付けIoT(レトロフィットIoT)とは
最新の工作機械でなくてもIoT化は可能です。ここでは、通信機能を持たない古い設備に、センサーなどを追加してIoT化する「後付けIoT」の手法を紹介します。
外付けセンサーによるデータ収集
古い工作機械でも、振動センサー、温度センサー、電流センサーなどを外付けすることで、稼働データを取得できます。例えば、主軸の電流値を計測すれば、負荷状況から切削工具の摩耗具合を推測可能です。これらのセンサーは比較的安価で、配線工事も最小限で済む無線タイプも増えており、リスクを抑えてIoT化を始められます。
積層信号灯(パトライト)の活用
多くの工作機械に設置されている積層信号灯(パトライト)の点灯状態を検知する方法です。光センサーを信号灯に取り付けるだけで、「緑(稼働中)」「赤(停止)」「黄(段取り中)」といった稼働ステータスを取得できます。
機械の新旧やメーカーを問わず適用できる汎用性の高さが特徴で、稼働率の可視化を手軽に実現する第一歩として採用されています。
カメラ・画像認識によるメーター読み取り
デジタルデータが出力できないアナログメーターや、古い制御盤の表示画面をカメラで撮影し、AIによる画像認識で数値データ化する手法です。
油圧計や温度計などのアナログ指針を自動で読み取ることで、巡回点検の手間を削減できます。既存の設備に大きな改造を加えずデータ収集が可能になるため、設備の保証期間や安全性を気にする場合に有効です。
工作機械IoT導入4ステップ
IoT導入を成功させるには、いきなり大規模に進めるのではなく、段階を踏むことが重要です。着実に成果を上げるための4つのステップを解説します。
1.解決したい課題と目的の明確化
まずは「何のためにIoT化するのか」を明確にしましょう。「稼働率を10%向上させたい」「チョコ停の原因を特定したい」「点検工数を削減したい」など、具体的な課題と目標を設定します。
目的が曖昧なままデータを集めても、活用されずに終わってしまいます。現場の担当者を巻き込み、解決すべき課題の優先順位を決めることが、プロジェクト成功の出発点です。
2.スモールスタートでのPoC
最初から全ラインに導入するのではなく、特定の工程に絞って試験導入(PoC:概念実証)を行います。安価な後付けセンサーなどを利用し、意図したデータが取れるか、現場の作業負担にならないかを確認しましょう。
この段階で小さく失敗し、軌道修正を行うことが、本格導入時のリスク低減につながります。
3.データの蓄積と可視化ツールの選定
PoCでデータの有用性が確認できたら、本格的なデータ収集と蓄積を開始します。収集したデータを現場が直感的に理解できるよう、BIツールやダッシュボードを活用して可視化しましょう。
グラフや色分けで状況を一目でわかるようにすることで、現場の気づきを促します。自社の運用に合った使いやすいツールの選定が、継続的な活用への鍵です。
4.現場運用への落とし込みと改善サイクル
IoT化はシステムを導入して終わりではありません。可視化されたデータをもとに、「なぜ停止したのか」「どうすれば改善できるか」を現場で議論し、アクションにつなげる仕組みが必要です。
朝礼でのデータ共有や、改善活動への反映など、業務フローの中にデータ活用を組み込みます。PDCAサイクルを回し、現場主導の改善の継続が、IoT化の最終的なゴールです。
導入時に直面しやすい課題と対策
工作機械のIoT化を進める上で直面する壁があります。あらかじめ対策を知っておくことで、スムーズな導入が可能になります。
費用対効果をどう示すか
IoTへの投資は、効果が見えにくいと言われることがあります。その対策として、スモールスタートにより得られた初期成果を具体的に示すことが重要です。ダウンタイム削減による機会損失の回避や、品質向上による廃棄ロス削減といった定量的な効果に加え、データに基づく迅速な意思決定といった定性的な価値も併せて訴求することで、導入効果を分かりやすく伝えることができます。
工場ネットワークの安全性
工場内の機器をネットワークに接続することで、サイバー攻撃のリスクが生じます。古いOSを使用している制御機器も多く、セキュリティ対策は必須です。工場内ネットワークと外部インターネットの間にファイアウォールを設置する、VPNを利用する、あるいは外部接続を行わない閉じたネットワークを構築するなど、適切なセキュリティ設計を行いましょう。
社内にIT専門家がいない
多くの中小製造業では、ITに精通した人材の確保が課題となっています。すべてを自社で構築しようとするのではなく、製造業向けにパッケージ化されたIoTサービスや、導入支援を行うベンダーを活用することが有効です。
近年では、センサーの選定から設置、可視化ツールの設定までをワンストップで提供するサービスも増えています。専門家の知見を取り入れながら、現場担当者が無理なく使いこなせる、シンプルなシステム構築を目指すことが重要です。
まとめ
工作機械のIoT化は、生産性向上とダウンタイム削減を実現する強力な手段です。古い設備であっても「後付けIoT」によって、低コストでデータの可視化が可能になります。
本記事で紹介した事例やステップを参考に、まずはできるところからIoT活用を始めてみてはいかがでしょうか。
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